日本の伝統や魅力を新しい形で発信し続けるー日本茶セレクトショップ「CHABAKKA TEA PARKS」
2021.10.21
日本の伝統や魅力を新しい形で発信し続けるー日本茶セレクトショップ「CHABAKKA TEA PARKS」
2021.10.21
はじめに
「おしゃれに楽しむ日本茶エンターテイメント」をコンセプトとする鎌倉発の日本茶セレクトショップ「CHABAKKA TEA PARKS」(以下、CHABAKKA)。
二極化している「お茶」産業に何を想い、何を生み出すのか。今回は、お茶を通して日本の伝統産業を新しい形で広めている、CHABAKKAそして代表である三浦氏の想いと取り組みに迫る。
「好き」から選択したファッション業界
小笠原:本日はよろしくお願いいたします。三浦さんはファッション業界をご経験後、現在は日本茶セレクトショップ「CHABAKKA TEA PARKS」(以下、CHABAKKA)の運営をされていますよね。まずは、ファッション業界に入ったきっかけを教えてください。
三浦氏:ファッションが「好き」という気持ちから始まりました。元々洋服がすごく好きで、「将来はファッション業界に進みたい」「自分のブランドをつくりたい」と思っていました。そのため、当時はファッションしか選択肢がなかったです。
高校卒業後にファッションの専門学校に進み、専門学校卒業後にThe SAZABY LEAGUEへ就職。その後、新しいブランドを立ち上げるということで知人から声をかけられ、TOKYO BASEに入りました。
小笠原:なるほど。当時のSTUDIOSですね。
三浦氏:はい。TOKYO BASEの立ち上げに携わったことが、私のキャリアにとって一番のターニングポイントでした。
小笠原:TOKYO BASEはどのような会社でしたか。
三浦氏:「オーナーシップを持て」という企業理念がありました。私を含めたボートメンバー7名は、社長がいながらも、自分がこの会社のオーナーだという気持ちをもって仕事をするというスタイルでした。最初はファッションが「好き」という気持ちから始めたのですが、TOKYO BASEで創業から関わり、経営にも興味を持つようになりました。
また、TOKYO BASEのオリジナルブランドは「MADE IN JAPAN」にこだわっていたので、ここから、日本の伝統文化への魅力を感じ、「ものづくり」への想いが芽生えてきました。デニムだったら岡山、レザーだったら岐阜、ニットだったら新潟。産地によって特産品・つくるものが違うので、実際に現地に出向いたり、メーカーとやり取りしたりしていました。TOKYO BASE時代は経営、現場の仕事、採用など、全ての業務を行っていましたね。
「MADE IN JAPAN」に対してのこだわり
小笠原:TOKYO BASEで経営と日本のものづくりに出会ったのですね。
三浦氏:そうですね。ファストファッションが流行している中で、「日本のブランド」や「日本のものづくり」に魅力を感じるようになりました。当時は洋服から見た「MADE IN JAPAN」でしたが、自分が起業する際には、まだまだ世の中に伝わっていない日本の技術や伝統を広めていきたいと考えるようになりました。
小笠原:「日本のカルチャー」を売りにしている会社のイメージがあります。三浦さんご自身の中に「日本」というキーワードを軸にしている点がTOKYO BASEと似ていますよね。
では、「日本のものづくり」の中で、三浦さんが「日本茶」を選んだ理由は何だったのでしょうか。
三浦氏:実は「日本茶」がやりたい。といった訳ではなかったんです。様々な日本の文化を探ったり、自分で感じたりはしていたけれども、まだ世の中に伝わっていないものを伝えたい。その手段として「日本茶」を選びました。ですので、竹細工・傘・工芸品など、様々な伝統のものの中から「日本茶」を選んだという形です。
なぜ日本茶業界なのか。二極化している「日本茶」
小笠原:「日本茶」はあくまでも方法の一つということですね。他の選択肢の中から三浦さんが選んだ「日本茶」の業界について教えていただけますか。
三浦氏:「日本茶」は身近過ぎるものです。だだからこそ知らない世界でもある。「日本茶」業界ではコンビニでも手軽に購入し、日常的に飲むことの出来る安価なペットボトルの日本茶と老舗の日本茶屋さんが売るような高級な日本茶とに二極化しています。
その中でコアな日本茶ファンは、日本の人口の10%もいないと思っています。発想ややり方を変えていけば、「日本で作っている日本の日本茶」を、その他の90%の人に広められるのではないかと思いました。
小笠原:それが三浦さんのマーケティング、日本茶業界でやりたいことなのですね。
三浦氏:業界が二極化しているからこそ、アップデートできると考えました。あまり僕ら世代の人たちが積極的に日本茶を飲んでいるイメージがありませんでした。逆に感度の高い20代・30代を狙ってアプローチをしていくことで、この業界を発展させることが出来ると思い日本茶業界に飛び込みました。
日本茶業界の現実のなかで、CHABAKKAが届けたいもの
小笠原:ビジネス的観点から日本茶業界に至ったようですが、日本茶を広めるために、どのような考えをお持ちでしょうか。
三浦氏:完全にブルーオーシャンに行きたいと考えました。高級志向のお茶ではなく、もっとエンタメ性やファッション性に溢れた、お客様がワクワクするような新しいスタイルでやりたいのです。
小笠原:日本茶の魅力を、全く新しい形で届けたいということですね。
三浦氏:そうですね。実際に農家さんへ足を運んで500種類以上のお茶を飲んだ結果、一般的には伝わっていないけれども、とても良いお茶を作っている農家さんがたくさんあることを初めて知りました。多くの人が日本茶の品種や作り手の人の想いを知らないですが、実際には品質にこだわって作っている、個性の溢れたお茶がこの世には沢山あるのです。CHABAKKAではそういた茶葉を厳選し、ユーザーに発信したいと思っています。
市場品ではなく嗜好品としての販売「顔の見えない販売はしたくなかった」
小笠原:ひとつひとつの農園の個性を重視する「シングルオリジン」にもこだわっていらっしゃいますよね。TOKYO BASEでも実際に生地の生産地へ足を運ぶこともされていたようですが、CHABAKKAでのシングルオリジンへのこだわりはこういったご経験からでしょうか。
三浦氏:逆ですね。シングルオリジンにこだわりたいので、生産地に働きかけをしています。それは絶対にこだわりたかったポイントです。顔の見えない販売はしたくなかったのです。農家さんが丹精込めて作っている単一品種の日本茶を皆様に届けていきたいと思っています。
小笠原:なるほど。それが「顔が見える販売」にこだわる理由なのですね。
三浦氏:顔が見えるというのはけっこう大事なことなのです。20代・30代の感度がいい層に届けていきたいので、たくさんのものが溢れている中で、生産者の想いや、どこでどのような人が作ったのかというストーリーが差別化できる大切な要素だと思いました。市場品ではなく「嗜好品」としてお茶の良さを伝えていきたいです。
あまり、業界を知らないほうが良い
小笠原:経営をするにあたって、「あまりその業界を知らないほうが良い」と伺いました。この発想はどのように生まれたのでしょうか。
三浦氏:実はアパレル時代からこういう考えがあって、ファッションのトレンドや、他社でどのような商品を出しているかは、あまり知ろうとはしていませんでした。トレンドを知り過ぎてしまうと、固定観念や先入観に捉われてしまう。それよりは、別のジャンルから色々とアイディアをとるようにしています。
しかし、トレンドとベーシックは違うので、日本茶について勉強して、資格も取得しています。日本茶の品種や効能などの知識を得ることはベーシックなことですし、ベースの知識を身につけることは日本茶を扱うものとして、「プロ」として当たり前のことと思っています。
小笠原:TOKYO BASEにいらっしゃったときと、考え方は変わらないということですね。
三浦氏:そうですね。扱うものがファッションから日本茶に変わりましたが、根本は全く変わっていないと思います。
小笠原:三浦さんは日本茶の名産地である静岡出身ですよね。今の事業を始める前、実家で飲んだ日本茶に衝撃を受けたとのことですが、元々日本茶の良さを知っていたわけではなかったのでしょうか。
三浦氏:日本茶や日本茶業界のことは無知でしたね。実家の日本茶についても、最初に飲んだときは「他とは違う」ということしか分かりませんでした。しかし、他にも感動を覚えるような日本茶があるのではないか?と思い、実際に飲み比べていくと違いが分かるようになっていきました。産地ごとの違いや作り手ごとの違い、さらにお米と同じで品種によっても違いがあることを知っていくうちに、この違いをもっと伝えていきたいと思いました。
様々な珍しい、アイデアが生まれる理由
小笠原:三浦さんが日本のものづくり、その中でも「日本茶」の業界に飛び込んだお話しは非常に興味深いものがありますね。ただ伝統を守るというだけではなく、CHABAKKAで提供している「サーバーから注ぐ日本茶」のように、非常に新しく珍しいアイデアも取り入れていますよね。どこからこのようなアイデアが出てくるのでしょうか。
三浦氏:元々接客をするのが好きで、お客様と話していく中で「こんなことはできるだろうか」と常に考えていいます。ですので、実際に「こんなことできないですか」と聞いてみたりしていますね。
また、色々なことに興味があるので、興味の向いた先でおもしろい商品を見つけ、ヒントをもらっています。
小笠原:常に頭の中にアイデアが浮かんでいるのですね。
三浦氏:そうですね。思考を休めるためにサウナやサーフィンをすることで頭をリフレッシュしているのですが、そこからもヒントを得ています。
日本の伝統文化や産業から新しい取り組みを行うこと
小笠原:まだ世の中に伝わっていないものを伝える。その手段のひとつとして「日本茶」を選んだとのことですが、他にも叶えたいことがあるのでしょうか。
三浦氏:そうですね。日本の伝統文化、伝統産業、斜陽化している産業で新しいことを行う。これが会社の理念でもあります。それらを活性化させて、お客様にも作り手にも楽しんでもらい、自分たちも楽しんで幸せになりたいです。
小笠原:事業が変わっても、届けたい世界観は変わらないということですね。
三浦氏:はい。今はその手段が「日本茶」ですが、違ったジャンル、違った業界での事業も考えています。事業が変わっても、これまでの経験を通してこの理念を実現させたいということに変わりはないですね。
おわりに
今回の対談で多くの日本伝統産業がある中で三浦氏が「日本茶」を選択した訳や、日本茶を通し日本の伝統産業が世間に広めていく、という強い想いを伺うことが出来た。特に「身近だからこそ知らない世界もある」という言葉が印象に残る。
二極化している日本茶業界に新たな風を吹き込むことが出来るのか。そしてどのように変化させていくのか。今後のCHABAKKAに期待していきたい。
次回は日本茶を活用した新たなプロダクトへの展開や、三浦氏自身が取り組む「ひと」にフォーカスを当てた取り組みに迫っていく。
株式会社Third Bay
日本茶セレクトショップCHABAKKA TEA PARKS事業の運営を主に、経営・営業コンサルタントやシェアリング事業の企画・運営を行う。
【世界を変え、人を変え、未来が過去を変え、そして新たな産業を生み出す】を理念に、
斜陽産業と化している日本の産業や伝統工芸に焦点を置き、既成概念にとらわれずに全く新しい付加価値を見出した商品とサービスを国内外に発信する。
三浦 健(みうら けん)
アパレル企業の株式会社TOKYO BASE(旧STUDIOUS)入社。
立ち上げメンバーとして創業から東証一部上場までの中心メンバーとして携わり、事業部エリアマネージャーとしては店舗運営・商品企画・人材育成・新店舗の立ち上げなど幅広い分野で従事。
2017年、起業を機に約12年に渡り携わってきたファッション業界を卒業し、2018年、自身が代表を務める株式会社Third Bayを設立。
インタビュアー:小笠原由多
大学時代に体育会活動に励みながら自身でアパレルブランドを立ち上げを経験。多くのD2Cブランドの立ち上げ経験を元に、インフルエンサーD2C事業責任者として商品企画からビジネス設計、商品販売まで全ての業務を担当。