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遥か彼方のまだ見ぬ境地へ。 自社田のテロワールとヴィンテージが表現された「彼の岸(ひのきし) 2020」がソムリエから評価される理由

2021.09.09

遥か彼方のまだ見ぬ境地へ。 自社田のテロワールとヴィンテージが表現された「彼の岸(ひのきし) 2020」がソムリエから評価される理由

2021.09.09

良き原料を求めて自ら育てた米からヴィンテージとテロワールを表現した日本酒「彼の岸 2020」が、装いも新たにリリースされます。
そんな「彼の岸 2020」のテイスティング対談が、コンテストで数々の受賞歴を持つ日本ソムリエ界のホープ、近藤佑哉氏を交えて実現しました。

エレガントな複雑さ。豊沃なテロワールから生まれた「彼の岸 2020」の魅力とは

久野社長と近藤さん

十時:「彼の岸2020」をテイスティングしてみて率直にどうですか?

近藤氏:すごく私の好みです。
やはり、米が育てられたテロワールの雰囲気を強く感じ、その産地が目に浮かんでくるというのが第一印象ですね。

久野氏:実は幾つになってもお客様・関係者に目の前で品を差し出す時は、ドキドキするんです。自分で香を確かめて、問題なし。その後一口運んで、問題なし。と確認できるまで、ドキドキなんです。きっと死ぬまでこの感覚は、もう変わらないと思います。

近藤さんに「好み」と言ってもらえて、まずはホッとしていますが、ソムリエさんと造り手が対峙する時は真剣勝負なんです。引き続きもう少し具体的に感想を聞かせていただいてもよろしいですか?

近藤氏:そうですね、まず「彼の岸 2020」を鼻に近づけると、メロンやライチ、ジャスミンのような香りから、華やかな白い花、そしてハーブのニュアンスはミネラルの存在から来ています。クリームチーズや燻製のスモーキーなニュアンスも感じる事ができます。そして温度が上がるとトロピカルな南国のフルーツの香に変化していきます。

十時:なるほど。さすがワインのプロですね! 色んなニュアンスが出てきますね!

久野氏:近藤さんの仕事は、造り手とお客様をつなぐパイプだと思うのです。お客様が判り易い様に、その香・味を言葉に置き換えて相互を繋ぐ滑らかで、しなやかなパイプなのです。
近藤さんの立ち振る舞ですが、非常にスマートでしょ!(笑)

近藤氏:次に、口に含むと、フレッシュかつソフトな酸味が広がり、とても優雅なエレガントさが特徴です。旨味を伴った心地のよい苦味が滑らかなテクスチャーと共に感じられ、複雑味が高いです。
その場ですぐに飲んでも十分に楽しめますが、少し時間をおいた熟成のポテンシャルも感じさせる日本酒です。それこそ、何年か熟成させてからもう一度試してみたいなと思いました。

※知った仲とはいえ、テイスティングは真剣勝負

久野氏:嬉しいです。特に嬉しいのは、「熟成のポテンシャル」を感じ取っていただけた事です。日本酒って早く飲まないといけないイメージが付いている部分もあると思いますが、年単位で熟成していくのです。ですから弊社はお米の収穫された年号をラベルに入れているのです。

人間も同じです。20代には20代のハツラツとした美しさがあります。その後30代、40代、50代と様々な経験と共に、年齢ごとの魅力が出て来ると思います。
決してそれは老いではないのです。熟度を増した大人の魅力が増してくると思って下さい。
この女性はまだ20代後半と言うイメージです。

近藤氏:久野さん、この特徴的な他にない香味はどこから生まれるんですか?

久野氏:料理も日本酒もワインも、全ては、その素材の個性とポテンシャルが一番影響を及ぼすと思うのです。
彼の岸は、山田錦の原産地、兵庫県西脇市黒田庄に構える自社田の米から生まれます。
日照時間・降水量・気温推移・寒暖差などから山田錦を育てるのに最適地で、この地で育てられた山田錦は、一粒が重い凝縮した米に仕上がることが大きな特徴です。

※兵庫県黒田庄の自社田で山田錦を育てている

近藤氏:まさしくワインの葡萄と同じですね!土地・品種・ヴィンテージからくる物語が日本酒にもある事が、この彼の岸から感じることができます。

久野氏:実はヴィンテージ2020年の黒田庄の山田錦は長い梅雨の影響で例年の50%しか収穫できなかったんです。しかしその中でちゃんと育ってくれたお米は生命力がありました。
そして標高が高い谷地という特徴がもたらす気品というテロワールも表現されていると思います。
その品種・テロワール・ヴィンテージの特徴を最大に引き出すのが醸造家の仕事です。

逆説的ですが、テクニカルな技法に頼らず、人の手を極力入れず、ナチュラルに醸してやらなければ、その特徴的な風味は出て来ない物なのですよ。

近藤氏:醸造家としてのお考えも、ワインの造り手の皆さんも同じ事をおっしゃいます。2020年のヴィンテージですが、天候の影響で収穫量が半分ですか! そんな物語があったんですね。
以前に「彼の岸 2019」も飲ませていただきましたが、その時の印象と2020年は違います。

ワインと同様にそんなヴィンテージ違いの楽しみ方ができるのも、自ら米を育てている九平次ならではですね。自然環境・天候を受け入れ、原料に向き合いこだわる事が如何に大切か、再認識させられます。

日本酒の魅力と、その中で九平次が表現する独自の魅力とは

十時:ワインのプロから見た日本酒の魅力とは何でしょうか。

近藤氏:日本酒の魅力は多岐にわたりますが、その中でも大きな魅力の一つが幅広く料理に合わせられることです。
ワインのセオリーとして「魚には白、肉には赤」という概念がありますが、日本酒は和洋中の垣根を越え、魚や肉、または野菜などの様々な食材や料理に合わせることができます。

また、コース料理のペアリングの間に日本酒を加える事で、アクセント・転調となり、お客様にとってより奥行きのある体感が出来ることも大きな魅力の一つです。

十時:なるほど、ペアリングの幅の広さが日本酒の魅力なのですね。「彼の岸 2020」を合わせるとしたら、どのような料理が良いのでしょか?

近藤氏:料理に合わせるのならば、香ばしく仕上げた白身魚のムニエルや滑らかな食感のクリームコロッケ、日本酒と乳製品は意外と相性が良いのです。
お肉の味わいをギュッと凝縮させたパテ・ド・カンパーニュなども相性が良さそうです。
ワイングラスでお楽しみいただければ「彼の岸」の香り・味わい・料理との相性をよりいっそう感じていただけると思います。

十時:なるほど、和食と言う概念ではなく、西洋の料理や肉などさまざまな料理に合うと言う事ですね! その中で、醸し人九平次だけが持つ魅力とは何なのでしょうか。

近藤氏:やはり何と言っても「テロワール」「米」です。
今回いただいた「彼の岸 2020」を中心として、その土地の個性やその年のキャラクターが表現されています。
従来の日本酒の概念を破り、日本酒の新たな可能性を感じることが出来ます。

そして九平次の日本酒は、一貫してエレガントなストラクチャーが味わいの土台となり、風味を引き立て、そこに「テロワール」や「米の個性」が重なり合うことで、様々な要素を感じることができます。
また九平次の特徴のひとつである上品で軽快な酸味も、 様々な料理との相性を増幅させ私たちを楽しませてくれます。

おわりに

プロのソムリエである近藤さんの「彼の岸」のテイスティング表現は的確で流石だった。
「彼の岸」は年によって特徴が違うとの話があったが、日本酒もワインのように、当たり前に年代ごとの飲み比べをする文化ができたら面白いのかもしれない。

また、九平次の原料にこだわる姿勢には、現在の日本酒業界の精米歩合(お米を磨いた比率)至上主義とは一線を引き、酒造りの原点回帰と本質を見つめ直すことを考えさせられた。原料への取り組みは近藤さんがこれまで培ってきたワインの世界に寄り添い、受け止められていると思った。このタッグなら日本酒の「新たな概念」を、お客様へ提供できる未来を感じた。
今後も2人の動向が楽しみだ。

ロングインタビューはこちら

「彼の岸」の先行予約はLINE公式アカウントのみで公開いたします。
その他、日本酒診断・配送状況確認などもありますので是非登録ください。

※20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されています。
※飲酒時の車の運転、重機械の操縦は法律で禁止されています。
※妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。
※過剰な飲酒は健康問題を引き起こします。適度な飲酒をお楽しみください。

萬乗醸造(ばんじょう じょうぞう)

創業1647年。今や国内のみならず海外のシェフ、ソムリエにも受け入れられる。97年、「醸し人九平次」は、機械的大量生産から脱却をめざし、手造り農家的な仕事へと回帰し、産声を上げる。パリの星付レストランへ売り込み、オンリストされる先鞭をつけた。兵庫・黒田庄に自ら田んぼを持ち、山田錦を育て、さらには2016年からはブルゴーニュ・モレサンドニでワインも醸している。

近藤 佑哉(こんどう ゆうや)

2012年大学卒業後、銀座レカンにコミ・ド・ランとして入社。その後、ホテル ニュー・オータニ レストラン トゥールダルジャン・トーキョーなどで研鑽を積み、2019年銀座レカンにソムリエとして戻る。2020年4月より現職。様々なコンクールで受賞歴があり、日本の若手ソムリエを代表する一人。

インタビュアー:十時悠径

大学ではデザインを専攻し、楽天にコンサルタントとして就職。その後、マネジメント経験を経て株式会社chipperを創業。これまで累計1,000社を超えるD2C立ち上げ・伝統産業・老舗リブランディング支援を行う。